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時間外労働等に対する割増賃金の通達 平成29年 通達

時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのための留意事項について

(平成29年7月31日付け基発073127号)

 

 「時間外労働等に対する割増賃金の 解釈について」が発出され、平成29年7月7日付けの最高裁判所第二小法廷判決を踏まえて、名称によらず、一定時間分までの時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金として定額で支払われる賃金についての解釈が示された。

 

これ自体は直ちに労働基準法に違反するものではないが、不適切な運用により、労働基準法上の時間外労働等の割増賃金の支払義務等に違反する事例も発生していることから、時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのために留意すべき事項を下記に示すため、監督指導等の実施にあたっては遺憾なきを期されたい。

 

                 記

 

1 平成29年7月7日付け最高裁判所第二小法廷判決の要旨は次のとおりであること。 (1) 本件は、医師である上告人(労働者)が、被上告人(使用者)に対して時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金等の未払分の支払いを求めた事案である。

 

(2) 被上告人と上告人の間には、時間外労働等に対する割増賃金を年俸の中に含める旨の合意(以下「本件合意」という。)があったことから、上告人が未払いを主張する時間外労働等の割増賃金は全て支払い 済みである旨主張した。

 

(3) しかしながら、本件合意においては、上告人に対して支払われる年俸のうち、時間外労働等の割増賃金に当たる部分が明らかにされていなかった。

 

(4) 最高裁は、割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含める方法で支払うことについて、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であるとした累次の判例(最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決、最高裁平成24年3月8日第一小法廷判決及び最高裁平成29年2月28日第三小法廷判決)を引用し、本件については、上告人に支払われた年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできないことから、被上告人の上告人に対する年俸の支払により、上告人の時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできないと判示し、原審に差し戻した。

 

2 労働基準法第37条が時間外労働等について割増賃金を支払うことを使用者に義務づけていることには、時間外労働を抑制し、労働時間に関する同法の規定を遵守させる目的があることから、時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っている場合には、上記1を 踏まえ、次のことに留意する必要があること。

 

(1)         基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提に、例えば、 時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金に当たる部分について、相当する時間外労働等の時間数又は金額を書面等で明示するなどして、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区別できるようにしているか確認すること

 

(2)  割増賃金に当たる部分の金額が、実際の時間外労働等の時間に応じた割増賃金の額を下回る場合には、その差額を追加して所定の賃金支払日に支払わなければならない

そのため、使用者が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平 成29年1月20日付け基発0120第3号)を遵守し、労働時間を適正に把握しているか確認すること。

 

3 上記2を踏まえ、今後次のように対応すること。

(1)   窓口での相談や集団指導等のあらゆる機会を捉えて、上記2で確認すべきとした内容について積極的に周知すること。

(2)    併せて、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の内容についてもリーフレット等に基づき説明し、周知すること。

(3)    (2) 監督指導を実施した事業場に対しては、時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っているか否かを確実に確認し、上記2に関する問題が認められた場合には、是正勧告を行うなど必要な指導を徹底すること。

 

ポイントは、下記の2点になります。

・残業代として支払われた部分と、その他の部分を判別することができること

・固定払いされた残業代以上の残業をした場合には、差額が支払われていること

 

 

 

実際の残業時間に関わらず、毎月一定の額を固定残業代として支払っている会社の場合、事業主は、基本給と残業代を区分けして、何時間の残業に見合う残業代がいくら支払われるのかについて、労働者に明示しておく必要があります。

 

また、実際の労働時間に見合う残業代が、固定残業代を上回っている場合には、その差額分を支払う必要があります。

 

差額分を支払わなければ、賃金不払いということで、労働基準法違反になります。

 

給料未払いに関する罰則は、下記のように2つに分かれます。

 

労働基準法24条違反として、30万円以下の罰金

 

 

割増賃金違反(残業代)として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金