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令和2年 厚生労働白書 社会保障の充実

【社会保障の充実は、高齢の親に対する私的扶養の負担を軽減してきた】p81

社会保障においては公的年金の充実や介護保険制度の創設等によって、高齢の親に対する生活費の負担や日常的な世話、介護といった私的扶養の負担が軽減されてきた。

 

公的年金については、1961(昭和36)年の国民皆年金1973(昭和48)年の物価スライド制の導入1985(昭和60)年の基礎年金の創設を通じて成熟が図られてきており、高齢者世帯の所得のうち、公的年金等が占める割合は平成に入ってからは67で推移している。

 

また、所得のすべてが公的年金等である高齢者世帯の割合についても56で推移しており、公的年金等が老後の生活保障において重要な役割を果たしていることがわかる。

 

また、1970年代頃より、高齢者のいわゆる「社会的入院」や家族介護の負担感から、高齢者介護問題への関心が高まり、1989(平成元)年の「高齢者保健福祉推進十か年戦略」(198912月大蔵・厚生・自治3大臣合意。ゴールドプラン)による財政措置と1990(平成2)年の福祉八法改正により導入された都道府県・市町村老人保健福祉計画に基づき、在宅福祉対策をはじめとする介護サービスの計画的な基盤整備が始まった。

 

ゴールドプランは、1989年に導入された消費税の財源を充てることによって10年間で6兆円余りを投入するという計画であり、その後、「高齢者保健福祉推進十か年戦略の見直しについて(新ゴールドプラン)」(1994(平成6)年1218日大蔵・厚生・自治大臣合意)、「今後5か年の高齢者保健福祉施策の方向ゴールドプラン21―」(1999(平成11)年1219日大蔵・厚生・自治3大臣合意)と引き継がれていった。

介護保険はこうした動きと並行して構想・検討され、2000(平成12)年の制度施行により要介護認定とケアマネジメント、利用契約に基づくサービス利用が始まり、それまで事実上低所得者に対象が限られていた高齢者介護が、ニーズに普遍的に応える仕組みへと大きく転換した。

 

【介護保険制度が定着する中、介護について家族のみに依存せず、介護サービスの利用を前提とする考え方が一般化してきている】

介護保険制度が施行されて20を迎え、制度が社会に定着する中、家族による介護の担い方についての意識は変わってきている。1986(昭和61)年の意識調査によれば、高齢期の生活に関し、病気などの介護について「重要な役割を果たすもの」として、性別・年齢階級を問わず7割以上の人が「家族」としていた。

一方で、2016(平成28)年に「どこでどのような介護を受けたいか」を尋ねた意識調査では、家族に依存せずに生活ができるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」が37.4%で最も多くなっている

 

次いで「自宅で家族中心に介護を受けたい」、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい」がそれぞれ約2割、有料老人ホームやケア付き高齢者住宅への住み替え、特別養護老人ホーム等への入所を想定した回答が合わせて約2割となっている。

家族のみに依存せず、介護サービスの利用を前提とする考えが一般化してきている。

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