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令和2年 旭紙業事件(労働基準法 選択式)

令和2年 労働基準法 選択式の問題解説

 横浜南労働基準監督署長(旭紙業)事件の概略と問題の解き方を解説していきます。

 

■事件の概略

自己の所有するトラックを持ち込んで会社と請負契約を締結したAが、会社の指示に従い運送業務の作業中に負傷してしまった。

 

Aは、労働者災害補償保険法による支給を労働基準監督署に請求したが、労働者災害補償保険法上の労働者には該当しないとして、不支給処分になった。

 

Aは、この処分を不服として、処分の取り消しを求めて訴えた事件。

 

■判決…労働者と認められずAが敗訴

 

■判例趣旨

自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、自己の危険と計算の下に右業務に従事していた上、右会社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、右運転手の業務の遂行に関し特段の指揮監督を行っておらず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであったなど判示の事実関係の下においては、右運転手が、専属的に右会社の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否することはできず、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定され、その報酬は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも一割五分低い額とされていたなどの事情を考慮しても、右運転手は、労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらない

 

上記をベースにして問題を確認していきます。

2 最高裁判所は、自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、労働基準法上の労働者に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、F紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、【 B 】の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がF紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。

そして、【 C 】等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。

そうであれば、上告人は、専属的にF紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」

 

 

 問題の判例は、【労働基準法上の労働者に当たるか否か】が、ポイントになります。

 

また、末尾を確認すると、【上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しない】の個所が判例の結論になります。

 

つまり、全体を通して、問題の概略は

労働基準法の労働者に該当するかどうかが問われた裁判であったが、労働者として認定されなかった事件

ということになります。

 

つまり、この問題は、【労働者として認定されなかった】ということをベースに問題を解いていきます。

 

また、問題文は隅から隅まで読む必要はありません。

メリハリをつけながら解答を導く必要があります。

 

 

【 B 】と【 C 】の前後が、メリハリをつけて読む個所になります。

 

上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、【 B 】の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やか

 

選択肢は、下記の4つが対象になります。

⑨ 業務遂行条件の変更   業務量、時間外労働 

⑯ 時間的、場所的な拘束  ⑲ 制裁、懲戒処分

 

「会社から業務の遂行に関して指揮監督はなく、一般の従業員と比較して穏やか」ということで、

⑨の業務遂行条件の変更…馴染まない。意味が通じない。

⑩の業務量は該当しそうだが、時間外労働は、そもそも労働者に該当しないので「時間外」は馴染まない。

⑲の制裁、懲戒処分も労働者でないので馴染まない。

 

つまり、【 B 】に一番馴染むのは、⑯の「時間的、場所的な拘束」になります。

 

 

次の【 C 】を確認します。

【 C 】等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない

 

【 C 】に入るものは、労働者性に馴染まない文言が入ります。

 

⑮ 公租公課の負担、F紙業が必要経費を負担していた事実

⑰ 事業組織への組入れ、F紙業が必要経費を負担していた事実

⑱ 事業組織への組入れ、報酬の支払方法

⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担

 

⑮と⑰の「F紙業が必要経費を負担していた事実」があってもなくても、労働者性の有無に結び付かない。

同じく

⑰と⑱の「事業組織への組み入れ」(意味が分かりにくいですが)があってもなくても、労働者性の有無に結び付きません。

 

つまり、⑳の報酬の支払い方法や、公租公課の負担については、労働者性に馴染まない処理も可能なので、⑳が正解になります。

 

また、ほかの解き方としては、

「F紙業が必要経費を負担していた事実」と「事業組織への組入れ」は、⑮、⑰、⑱と被っているので、この3つの1つを選ぶと矛盾が生じてきます。

従って、⑳が一番無難ということでの選択も可能になります。

 

2 最高裁判所は、自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、労働基準法上の労働者に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、F紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、【 B 】の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がF紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。

 

そして、【 C 】等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない

そうであれば、上告人は、専属的にF紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」

 

マーカーを付けた個所を重点的に読んでいくことが必要です。

(メリハリを付けます。)

 

■選択肢

① 07   1  ③ 15    2   

⑤ 1 月   3月  ⑦ 6 月   1

⑨ 業務遂行条件の変更   業務量、時間外労働

⑪ 工事着手後 1 週間を経過するまで  工事着手 30 日前まで

⑬ 工事着手 14 日前まで  工事着手日まで

⑮ 公租公課の負担、F紙業が必要経費を負担していた事実

⑯ 時間的、場所的な拘束

⑰ 事業組織への組入れ、F紙業が必要経費を負担していた事実

⑱ 事業組織への組入れ、報酬の支払方法

⑲ 制裁、懲戒処分

⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担

 

【正解肢】

時間的、場所的な拘束

報酬の支払方法、公租公課の負担

 

                              (了)

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