平成30年厚生労働白書 持続可能で安心できる年金制度の運営

持続可能で安心できる年金制度の運営

1) 公的年金制度の最近の動向について

1 持続可能で安定的な公的年金制度の確立

公的年金制度の持続可能性を高め、将来の世代の給付水準の確保等を図るため、短時間労働者への被用者保険の更なる適用拡大マクロ経済スライドによる調整ルールの見直国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除賃金が物価よりも低下する場合に、賃金の低下に合わせて年金額を改定するルールの導入等を内容とする「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第114号。以下「持続可能性向上法」という。)が第192回国会において成立した。

 

また、無年金者をできる限り救済すると同時に、納付した年金保険料を極力給付に結びつける観点から、老齢基礎年金等の受給資格期間を25年から10に短縮する措置を消費税率の10%への引上げ時から2017(平成29)年81日に改める「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第84号。以下「年金受給資格期間短縮法」という。)が第192回国会において成立した。

 

 

2 近年の制度改正の施行状況について

①年金受給資格期間の25年から10への短縮

年金受給資格期間短縮法により、これまで保険料の納付期間や納付を免除された期間等が25年に足りず、年金を受け取ることができなった方についても、保険料納付済期間等が10年以上あれば新たに年金の受給対象となり、201710月から年金が支給れた。これにより年金が支払われた者は2018(平成30)年3月までで51.8万人となっている。

 

 

②短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進(20174月施行)

2016(平成28)年10月から、従業員数が501人以上の企業において、週に20時間以上働く等の一定の要件を満たす短時間労働者を対象に被用者保険の適用拡大が実施されているが、適用拡大をより一層進める観点から、従業員数が500人以下の中小企業で働く短時間労働者についても、労使間での合意を前提に、企業単位で適用範囲を拡大した

この改正により、20181月現在、501人以上の企業において37万人が、500人以下の企業で0.3万人が、新たに被用者保険の加入者となっている。

働きたい人が働きやすい環境を整えるとともに、短時間労働者に対する年金などの保障を厚くする観点から、被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大を進めていくことは重要である。短時間労働者が被用者保険に加入することにより、将来受け取る年金が増えることに加え、障害がある状態になった場合なども、より多くの年金を受け取ることができるほか、医療保険においても傷病手当金や出産手当金を受け取ることができるといったメリットもある。

これらの内容等について、リーフレット等を活用し、引き続き周知・広報に取り組んでいく。

 

③マクロ経済スライドによる調整ルールの見直し(20184月施行)

マクロ経済スライドは、少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないように、保険料の上限を固定し、その限られた財源の範囲内で年金の給付水準を徐々に調整する仕組みとして導入されたものであり、賃金・物価がプラスの場合に限り、その伸びを抑制する形で年金額に反映させるものである。

マクロ経済スライドによる調整をより早く終了することができれば、その分、将来年金を受給する世代(将来世代)の給付水準が高い水準で安定することになる。

このため、マクロ経済スライドによる調整をできるだけ早期に実施するために、現在の年金受給者に配慮する観点から年金の名目額が前年度を下回らない措置名目下限措)は維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で、前年度までの未調整分(キャリーオーバー分)を含めて調整することとした。

2018年度の年金額改定については、2017年度から据え置きとなり、未調整分の0.3が翌年度以降に持ち越された。

 

 

 

④国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除(2019(平成31)年4月施行)

次世代育成の観点から、国民年金第1号被保険者の産前産後期間(出産予定月の前月から出産予定月の翌々月までの4か月間)の保険料を免除することとし、免除期間については満額の基礎年金を保障することとしている。

年間約20万人の方が対象となる見込みであり、この費用については、国民年金第1号被保険者全体で負担し支え合う観点から、国民年金の保険料が月額100程度引き上げられる。

 

 

★令和3年改正のため参考

⑤賃金の低下に合わせた年金額の改定ルールの見直し(20214月施行予定)

少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないよう、現役世代の負担能力を示す賃金が変動する範囲内で年金額を改定するという基本的な考え方に立って、これまでも制度改正に取り組んできており、2004(平成16)年の年金制度改革では、賃金が物価ほどには上昇しない場合には、物価変動ではなく賃金変動に合わせて年金額を改定するルールを導入していた。

しかしながら、賃金が低下する場合には、こうした考え方が徹底されていなかったため、過去10年余りのデフレ経済の下で賃金が低下した一方で、年金額はこの賃金の低下に連動しなかった。この結果、現役世代の賃金に対する年金受給者が受け取る年金の比率が従来よりも上昇する一方で、現役世代が将来受け取る年金の比率は従来よりも低下することが、財政検証の結果により明らかとなった。

 

このため、将来年金を受け取る世代の給付水準を確保する観点から、賃金が物価よりも低下する場合に、賃金の低下に合わせて年金額を改定するようルールを見直すこととした。

なお、この見直しについては低所得・低賃金の方に対する最大年6万円の年金生活者支援給付金を201910月までに実施した後に施行することとしている。

 

 

問題

下記問題は、全て正解です。

 

[問題]公的年金制度の持続可能性を高め、将来の世代の給付水準の確保等を図るため、短時間労働者への被用者保険の更なる適用拡大、マクロ経済スライドによる調整ルールの見直し、国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除、賃金が物価よりも低下する場合に、賃金の低下に合わせて年金額を改定するルールの導入等を内容とする改正が行われた。

 

[問題]無年金者をできる限り救済すると同時に、納付した年金保険料を極力給付に結びつける観点から、老齢基礎年金等の受給資格期間を25年から10年に短縮する改正を行った。

 

[問題]保険料納付済期間等が10年以上あれば新たに年金の受給対象となり、201710月から年金が支給された。

 

[問題]上記の措置により年金が支払われた者は、2018(平成30)年3月までで約51.8万人となっている。

 

[問題]2016(平成28)年10月から、従業員数が501人以上の企業において、週に20時間以上働く等の一定の要件を満たす短時間労働者を対象に被用者保険の適用拡大が実施されている。

 

[問題]適用拡大をより一層進める観点から、従業員数が500人以下の中小企業で働く短時間労働者についても、労使間での合意を前提に、企業単位で適用範囲を拡大した。

 

[問題]この改正により、20181月現在、501人以上の企業において約37万人が、500人以下の企業で約0.3万人が、新たに被用者保険の加入者となっている。

 

[問題]マクロ経済スライドは、少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないように、保険料の上限を固定し、その限られた財源の範囲内で年金の給付水準を徐々に調整する仕組みとして導入されたものであり、賃金・物価がプラスの場合に限り、その伸びを抑制する形で年金額に反映させるものである。

 

[問題]マクロ経済スライドによる調整をより早く終了することができれば、その分、将来年金を受給する世代(将来世代)の給付水準が高い水準で安定することになる。

 

 

[問題]マクロ経済スライドによる調整をできるだけ早期に実施するために、現在の年金受給者に配慮する観点から年金の名目額が前年度を下回らない措置(名目下限措置)は維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で、前年度までの未調整分(キャリーオーバー分)を含めて調整することとした。

 

[問題]2018年度の年金額改定については、2017年度から据え置きとなり、未調整分の0.3%が翌年度以降に持ち越された。

 

[問題]次世代育成の観点から、国民年金第1号被保険者の産前産後期間(出産予定月の前月から出産予定月の翌々月までの4か月間)の保険料を免除することとし、免除期間については満額の基礎年金を保障することに平成31年4月に改正された。

 

[問題]国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料を免除の対象者は、年間約20万人となる見込みであり、この費用については、国民年金第1号被保険者全体で負担し支え合う観点から、国民年金の保険料が月額100円程度引き上げられることとした。

 

 

 

ダウンロード
2020年 厚生労働白書 持続可能で安心できる年金制度の運営.pdf
PDFファイル 160.2 KB