労働基準法

《目次》【割増賃金】

【割増賃金】 (法37条)

【問題】労働基準法第33条又は第36条に規定する手続を経ずして時間外又は休日労働をさせた場合においても、使用者は、同法第37条第1項に定める割増賃金の支払義務を免れない。

(平成23年 問4E)

【解答】○

【解説】(昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号)
■設問のとおり正しい。

■労基法36条第1項の協定によらない時間外労働又は休日労働であっても、割増賃金を支払う必要あり。


【問題】労働基準法第37条第4項に基づく同法施行規則第21条の規定によって、割増賃金の計算の基礎となる賃金には住宅手当は算入されないこととされており、この算入されない住宅手当には、例えば、賃貸住宅の居住者には3万円、持家の居住者には1万円というように、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされている手当も含まれる。

(平成14年 問3C)

【解答】×
【解説】(法37条4項、則21条3号、平成11年3月31日基発170号)
■一律支給(全員定額)の住宅手当⇒割増賃金の計算に含めない。


【問題】年間賃金額を予め定めるいわゆる年俸制を採用し、就業規則により、例えば決定された年俸の17分の1を月例給与として支給し、決定された年俸の17分の5を二分して6月と12月に賞与として支給することを定めて支給しているような場合には、これらの賞与は、労働基準法第 37条の割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外することはできない。

(平成14年 問3D)

【解答】○
【解説】(法37条4項、則21条5号、平成12年3月8日基収78号)
割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外する「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」とは、支給額があらかじめ確定されていないものをいう。
設問のように年俸制で支給額が確定しているので、割増賃金の計算の基礎となる賃金から控除することはできません。


【問題】労働基準法第37条には、「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と規定されていることから、同法第37条に規定する割増賃金は、同法第33条又は第36条第1項の規定に基づき労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合に支払うべきものであって、これらの規定による手続を必要とする時間外又は休日の労働であっても、これらの規定による手続をとらずに行われたものに対しては割増賃金の支払の必要はない。

(平成18年 問5B)

【解答】×

【解説】(法37条、昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号、小島撚糸事件(昭和35年7月14日最高裁判決)
36協定なしに時間外又は休日労働させた場合⇒割増賃金の支払義務が発生します。
【ポイント】
やや長い設問です。
じっくり問題文を読み込むと時間がなくなってしまいます。
問題への対処の仕方として、後ろから見ていきます。
『これらの規定による手続きをとらずに…割増賃金の支払いの必要はない』
1つは、割増が必要か不必要かという論点でとらえることができます。
また問題文の前半は、割増賃金の律が記載されていますが、数字が適正かどうかの判断も必要です。
それ以外は、36協定の説明であり、その部分からの正誤判断の問題作成自体困難です。
シンプルに最後の行の論点から明確にしていくと短時間で解答が導き出せます。


【問題】労働基準法第37条に定める割増賃金の基礎となる賃金(算定基礎賃金)はいわゆる通常の賃金であり、家族手当は算定基礎賃金に含めないことが原則であるから、家族数に関係なく一

律に支給されている手当は、算定基礎賃金に含める必要はない。

(平成23年 問6E)

【解答】×
【解説】(法37条、昭和22年11月5日基発231号)
■割増賃金(時間外・休日労働の際の手当)の基礎から除外する賃金
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、例外として上記手当であっても
・扶養家族である家族数に関係なく一律に支給されている家族手当⇒割増賃金の基礎に含めます。
・一律に支給される通勤手当


【問題】労働基準法第37条第5項及び労働基準法施行規則第21条の規定によって、割増賃金の計算の基礎となる賃金には家族手当、住宅手当等は算入されないこととされており、例えば、賃貸住宅の居住者には3万円、持家の居住者には1万円というように、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされている手当は、同規則第21条でいう住宅手当に該当し、同法第37条の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

(平成19年 問3C)

【解答】×

 【解説】(法37条5項、則21条、平成11年3月31日基発170号)
割増賃金の基礎となる賃金には、次の賃金を算入しません。
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、
●住宅手当⇒全員一律に支給
●家族手当⇒扶養家族の家族数に関係なく一律に支給
●通勤手当⇒距離に関係なく一律支給
に関しては、賃金に参入して計算します。


【問題】タクシー料金の月間水揚高に一定の歩合を乗じて賃金を算定・支給する完全歩合給制においては、時間外労働及び深夜労働を行った場合に歩合給の額の増額がなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することができないものであったとしても、歩合給の支給によって労働基準法第37条に規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたと解釈することができるとするのが最高裁判所の判例である。

(平成22年 問4E)

【解答】×

【解説】(高知県観光事件)
■歩合給の支給によって労働基準法第37条に規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたと解釈することは違法というのが判例の趣旨。


【問題】変形労働時間制を採用していない事業場において、使用者が具体的に指示した仕事が客観的に見て一日の法定労働時間内では完了することができないと認められる場合のように、超過勤務の黙示の指示によって労働者が当該法定労働時間を超えて労働した場合には、使用者は、労働基準法第37条の規定による割増賃金を支払わなければならない。

(平成13年 問5D)

【解答】○

【解説】(法37条1項、昭和25年9月14日基収2983号)
超過勤務について黙示の指示ということなので、法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となり、使用者は割増賃金を支払う必要があります。


【問題】使用者から会議への参加を命じられた場合に、その会議が法定労働時間を超えて引き続き行われたときは、使用者は、当該引き続き行われた時間について、労働基準法第37条第1項の規定による割増賃金を支払わなければならない。

(平成21年 問5B)

【解答】○

【解説】(法37条、法37条1項)
使用者から参加を命じられた会議⇒労働時間に該当します。
当然その会議が法定労働時間を超えて行われたときは、割増賃金の支払いが必要となります。


【問題】変形労働時間制を採用せず、始業時刻が午前8時、終業時刻が午後5時である事業場において、ある労働者が午前8時から午前9時直前まで遅刻した日について、当該労働者を午前9時から午後6時まで労働させた場合、その午後5時から6時まで労働した時間については、労働基準法第37条に基づく割増賃金を支払う必要はない。なお、当該事業場における休憩時間は正午から1時間である。

(平成13年 問6C)

【解答】○

【解説】(法37条、昭和22年12月26日基発573号、昭和33年2月13日基発90号)
遅刻をした場合の処理ですが、全体の労働時間の中で法定労働時間に収まっていれば、割増賃金を支払う必要はありません。


【問題】週の法定労働時間及び所定労働時間が40時間であって変形労働時間制を採用していない事業場において、月曜日に10時間、火曜日に9時間、水曜日に8時間、木曜日に9時間労働させ、金曜日は会社創立記念日であるので午前中4時間勤務とし午後は休業としたときは、その週の総労働時間数は40時間であるので、この月曜から金曜までについては、労働基準法第37条に基づく割増賃金を支払う必要はない。

(平成13年 問6D)

【解答】×

【解説】(法37条)
割増賃金の計算は、
●1週間で法定労働時間を超えている場合
●1日で法定労働時間を超えている場合
の両面で判断していきます。
仮に1週間の総枠で法定労働時間内であっても、1日の労働時間が法定労働時間を超えていれば割増賃金は発生します。


【問題】年間賃金額を予め定めるいわゆる年俸制を採用する事業場において、就業規則により、決定された年俸の16分の1を月例給与とし、決定された年俸の16分の4を2分して6月と12月にそれぞれ賞与として支給し、他に交通費実費分の通勤手当を月々支給することを定めて支給しているような場合には、割増賃金の支払いは、月例給与に賞与部分を含めた年俸額を基礎として計算をして支払わなければならない。

(平成17年 問7B)

【解答】○

【解説】(法37条4項)
割増賃金の基礎から除外できる「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)」⇒支給額があらかじめ確定されていないものをいいます。
設問は年俸制で、支給額が確定されているので、割増賃金の算定に含める必要があります。


【問題】始業時刻が午前8時、終業時刻が午後5時、休憩時間が正午から午後1時までの事業場において、残業を行い、翌日の法定休日の午前2時まで勤務したとき、午後5時から午後10時までは通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上の割増賃金、午後10時から翌日の午前2時までは6割以上の割増賃金を支払わなければならない。

(平成19年 問3D) 

【解説】×

【解答】(法37条、則20条、平成6年1月4日基発1号)
時間外又は休日労働が深夜に及んだ場合の割増賃金の問題です。
設問の場合は
●午後5時から午後10時までは⇒2割5分以上の率
●午後10時から午前0時までは5割以上(時間外労働の率2割5分+深夜業の率2割5分)の率
●午前0時から午前2時までは6割以上(休日労働の率3割5分+深夜業の率2割5分)の率
で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
したがって、設問は誤りになります。


【問題】週休1日制の事業場において、就業規則に休日を振り替えることができる旨の規定を設け、この規定に基づき、あらかじめ、ある週の休日を翌週の労働日と振り替えた場合には、当該休日は労働日となりその日に労働させても、休日労働とはならないが、休日を振り替えたことにより、その週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する割増賃金を支払わなければならない。

(平成18年 問5C)

【解答】○

【解説】(法35条、昭和22年11月27日基発401号、昭和63年3月14日基発150号)
■振り替え休日の際の時間外労働に関しての問題。

■結論は、振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超える場合

⇒その超えた時間については時間外労働とり、36協定及び割増賃金の支払が必要。


【問題】労働基準法第37条は、使用者が第33条又は第36条第1項の規定により労働時間を延長した場合においては、その時間の労働については、一定の方法により計算した割増賃金を支払わなければならない旨規定しているが、これは当然に通常の労働時間に対する賃金を支払うべきことを前提とするものであるから、月給制により賃金が支払われる場合であっても、当該時間外労働については、その労働時間に対する通常の賃金を支払わなければならない。

(平成15年 問3C)
【解答】○
【解説】(法37条、昭和23年3月17日基発461号)
当然月給者であっても、残業をしたら割増賃金(残業代)が発生するので正解になります。


【問題】賃金が出来高払制その他の請負制によって定められている者が、労働基準法第36条第1項又は第33条の規定によって法定労働時間を超えて労働をした場合、当該法定労働時間を超えて労働をした時間については、使用者は、その賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該法定労働時間を超えて労働をした時間数を乗じた金額の2割5分を支払えば足りる。

(平成18年 問5E)

【解答】○
【解説】(法37条、則19条1項6号、昭和23年11月25日基収3052)
■出来高払制等の労働者に対して⇒賃金算定期間において出来高払制等によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数(時間外分も含む)で除した金額に延長労働時間数を乗じた金額の2割5分(時間外の割増賃金)を支払うことになる。


【問題】ある作業中に、やむを得ない事情により特殊な危険作業(例えば高圧電流の通じる線を取り扱う作業)に従事する場合、これに対してその日は特に危険作業手当を支給することになっているが、当該危険作業手当は、その労働者の通常の労働日に対する賃金とは関係のない臨時的なものと考えられるので、当該危険作業が法定の時間外労働として行われた場合であっても、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない。

(平成16年 問5A)
【解答】×
【解説】(昭和23年11月22日基発1681号)
危険作業手当が割増賃金の基礎となる賃金に算入するのかどうかが論点です。
割増賃金(時間外・休日労働の際の手当)の基礎から除外する賃金
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
をしっかり押さえていれば難しくはない問題です。

ただし、例外もあるので注意してください。
・扶養家族である家族数に関係なく一律に支給されている家族手当⇒割増賃金の基礎に含めます。
・一律に支給される通勤手当


【問題】始業時刻が午前8時、終業時刻が午後5時、休憩時間が正午から午後1時までの事業場において、徹夜残業を行い、翌日の法定休日の正午において当該残業が終了した場合、当該法定休日の午前8時までは前日の労働時間の延長として、その後は法定休日の労働として、割増賃金の計算を行わなければならない。

(平成16年 問5B)
【解答】×
【解説】法37条、平成6年5月31日基発331号)
■休日は原則として暦日なので、法定休日の午前0時以降の労働に関しては休日労働の割増賃金が発生。


【問題】その賃金が完全な出来高払制その他の請負制によって定められている労働者については、その賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間における総所定労働時間数で除した金額を基礎として、割増賃金の計算の基礎となる通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額を計算する。

(平成16年 問5C)

【解答】×

【解説)(則19条1項6号、平成11年3月31日基発168号)
■「総所定労働時間数」ではなく、「総労働時間数」で除した金額を基礎として割増賃金の計算基礎となる通常の賃金を計算。


【問題】労働者派遣契約上、法定時間外労働及び法定休日労働がないものとされ、したがって、労働基準法第36条の規定に基づく時間外・休日労働に関する協定の締結など法所定の手続がとられていない場合であっても、派遣先の使用者が、当該労働者派遣契約に違反して法定休日において派遣中の労働者に休日労働を行わせたときは、派遣先の使用者ではなく派遣元の使用者が当該休日労働に係る割増賃金を支払わなければならない。

(平成16年 問5D)
【解答】○
【解説】(昭和61年6月6日基発333号)
まずは、派遣労働者の割増賃金は、派遣元の使用者が支払います。
設問では、所定の手続きを行っていないということですが、違法であるかどうかに関係なく、割増賃金は発生します。


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