健康保険法

【出産手当金と傷病手当金との調整】 (法103条)

【問題】傷病手当金の受給中に出産手当金が支払われるときは、出産手当金の支給の方が優先され、その期間中は傷病手当金の支給が停止される。もし出産手当金を支給すべきときに傷病手当金が支給された場合は、出産手当金の内払いとみなされる。
(平成13年 問6C)
【解答】○
【解説】(法103条)
■設問のとおり出産手当金が優先される。


【問題】被保険者が出産手当金を受給している期間中に、けがをして傷病手当金を受給するような状態になり、傷病手当金が支給された場合、その傷病手当金は保険者に納入告知書に基づき現金で返還しなければならない。
(平成19年 問5A)
【解答】×
【解説】(法103条2項)
■出産手当金が支給される場合⇒その期間について傷病手当金は支給されない。
■出産手当金を支給すべき場合において傷病手当金が支払われたとき⇒その支払われた傷病手当金は、出産手当金の内払として処理。

 


【傷病手当金と出産手当金の継続給付】 (法104条)

【問題】被保険者の資格喪失後に傷病手当金を受けるには、資格を喪失した日の前日まで継続して6ヶ月以上被保険者の資格を有していたことが必要である。
(平成14年 問7C)
【解答】×
【解説】(法104条)
資格喪失後の傷病手当金を受けるためには、被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であることが要件となる。
よって、問題文の場合は「6ヶ月以上」となっているので誤りである。


【問題】継続して1年以上被保険者(任意継続被保険者、特例退職被保険者及び共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者であって、被保険者の資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている者は、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者から傷病手当金を受けることができる。ただし、資格喪失後に任意継続被保険者になった場合は、その傷病手当金を受けることはできない。
(平成23年 問2C)
【解答】×
【解説】(法104条)
被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができることとされている。
この資格喪失後の傷病手当金の継続給付の要件を満たしている者が、任意継続被保険者となった場合であっても傷病手当金の継続給付を受けることができる。
よって、「資格喪失後に任意継続被保険者になった場合は、その傷病手当金を受けることはできない。」とした問題文は誤りとなる。
しかしながら、資格喪失後の傷病手当金の継続給付の要件を満たしている者であっても特例退職被保険者となった場合は傷病手当金の継続給付を受けることはできない。(法附則3条5項)


【問題】資格喪失時に療養の給付を受けていた者が、資格喪失後に初めて労務不能の状態になったときは、傷病手当金が支給されない。(一部改正)
(平成14年 問7D)
【解答】○
【解説】(法104条)
資格喪失後の傷病手当金を受給するためには、資格喪失の際に現に傷病手当金の支給を受けているか、受給権はあるが、事業主から報酬を受けているために支給を停止されている状態である必要がある。
問題文のように「資格喪失後に初めて労務不能になった場合」は、資格喪失後の傷病手当金は支給されない。


【船員保険の被保険者となった場合】 (法107条)

【問題】被保険者の資格を喪失した後の出産手当金の継続給付を受けていた者が船員保険の被保険者となったときは、その給付が行われなくなる。
(平成15年 問8D)
【解答】○
【解説】(法107条)
資格喪失後船員保険の被保険者になった者については、船員保険より同様の給付を受けることができるために、健康保険の「傷病手当金又は出産手当金の継続給付」、「資格喪失後の死亡に関する給付」、「資格喪失後の出産育児一時金の給付」は行われない。


【問題】被保険者の資格喪失後に出産手当金の支給を受けていた者が船員保険の被保険者になったときは、出産手当金の支給は行われなくなる。
(平成21年 問8E)
【解答】○
【解説】(法107条)
傷病手当金又は出産手当金の継続給付、資格喪失後の死亡に関する給付、資格喪失後の出産育児一時金の給付は、被保険者であった者が船員保険の被保険者となったときは行われないことになっている。これは、船員保険の被保険者となれば、船員保険により同様の給付を受けることができるので、健康保険における保険給付を停止することとした調整規定である。
よって、問題文は正解となる。


【傷病手当金との支給調整】 (法108条、109条)

【問題】被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者であって、その資格を喪失した日の前日において報酬を受けることができたために傷病手当金の支給が停止されていたものの、その資格を喪失した日において報酬を受けることができなくなったものは、傷病手当金の継続給付を受けることができる。
(平成15年 問8A)
【解答】○
【解説】(法104条、昭和27年6月12日保文発第3367号)
■設問に該当する者が資格を喪失し、事業主より報酬を受けなくなれば、当然にその日より傷病手当金が支給される。


【問題】適用事業所に使用される常勤職員であって傷病手当金の支給を受けることができる者が、老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給を受けることができるときは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合算額を360で除して得た額が、傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が傷病手当金として支給される。
(平成17年 問6C)
【解答】×
【解説】(法108条4項)
■傷病手当金と老齢退職年金給付が重複して支給される場合に調整の対象になる者

⇒傷病手当金の継続給付を受けている者
■設問の場合

⇒傷病手当金と老齢退職年金給付が重複して支給される。


【問題】任意継続被保険者又は資格喪失後傷病手当金を受けている者が、老齢厚生年金等を受けることができるときは、傷病手当金は支給されない。ただし、老齢厚生年金等の額が傷病手当金の額を下回る場合は、差額が支給される。
(平成13年 問9C)
【解答】○
【解説】(法108条4項)
■任意継続被保険者等の退職者について、退職老齢年金給付と傷病手当金が併給されている場合

⇒調整あり。
■調整方法

⇒支給されている老齢退職年金給付の額を360で除して得た額(1円未満は切り捨て)と傷病手当金の日額を比較して、傷病手当金の日額が老齢退職年金給付の日額より多い場合は、その差額を傷病手当金として支給。


【問題】被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者が、療養のため労務に服していなかったが、在職中は報酬を受けていたため傷病手当金の支給を停止されていた場合、退職して報酬の支払いがなくなったときは、傷病手当金の支給を受けることができる。
(平成21年 問8D)
【解答】○
【解説】(法104条、昭和27年6月12日保文発3367号)
 ■「報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金又は出産手当金を支給しない」と規定。

■ただし、その者が資格を喪失し事業主より報酬を受けなくなれば、法第104条(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)によりその日より傷病手当金は支給される。


【問題】出産手当金について、出産した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、出産手当金を支給しない。ただし、その受けることができる報酬の額が、出産手当金の額より少ないときは、その差額を支給する。
(平成23年 問3C)
【解答】○
【解説】(法108条1項)
■出産した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、出産手当金を支給しないので正解。


【問題】報酬との調整規定により減額された傷病手当金を受給している期間中に、同一傷病に関して障害厚生年金が支給されるようになったときは、「減額しない本来の傷病手当金の額」と「障害厚生年金と障害基礎年金との日額の合計額」との差額が支給される。
(平成18年 問4D)
【解答】×
【解説】(法108条1項・2項)
■報酬との調整規定により減額された傷病手当金を受給している期間中に、同一傷病に関して障害厚生年金が支給される場合

⇒「傷病手当金の日額と障害厚生年金及び障害基礎年金の日額」、「傷病手当金の日額と報酬額」のそれぞれの差額を計算し、それぞれの差額のうちいずれか少ない方の額が傷病手当金として支給されるので誤り。


【問題】育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律に規定する介護休業期間中について、介護休業手当など、報酬と認められる諸手当を受給しながら介護休業を取得しているときに病気をした場合は、傷病手当金は支給されない。
(平成17年 問6D)
【解答】×
【解説】(法108条1項、平成11年3月31日保険発第46号・庁保険発第9号)
■「傷病手当金は支給されない。」⇒「傷病手当金は調整される。」にすれば正しい。

 


【問題】傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の傷病により障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金が優先して支給される。ただし、その障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由により障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金額と当該障害基礎年金額との合算額)を360で除して得た額が、傷病手当金の額より多いときは、その差額を支給する。
(平成23年 問9B)
【解答】×
【解説】(法108条2項、則89条1項)
■「傷病手当金が優先して」⇒「障害厚生年金が優先して」にすれば正しい。


【問題】被保険者資格を喪失後に傷病手当金の継続給付を受給している者が、老齢又は退職を支給事由とする年金である給付であって政令で定めるもの(以下「老齢退職年金給付」という。)の支給を受けることができるとき、老齢退職年金給付は支給されない。
(平成23年 問2D)
【解答】×
【解説】(法108条4項)
■「老齢退職年金給付」⇒「傷病手当金」にすれば正しい。