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令和3年 労働基準法 選択式(国際自動車事件)の解説と解き方

令和3年 労働基準法 選択式問題(国際自動車事件)を確認していきます。

 

まずは、国際自動車事件の概要です。

 

■事件の概要…割増賃金の支払いの有効性が問われた事件

タクシー乗務員(原告)が、歩合給の計算にあたり売上高の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨を定める賃金規則は無効であるとして、会社側(被告)に未払い残業代の支払いを求めていた裁判。

 

令和2330日の最高裁判決では原告側の主張を認め、会社の賃金規則の定めが割増賃金の支払いとは言えないとして、残業代の金額を審理させるため高等裁判所へ差戻しされ、最終的には会社側が未払残業代等を支払うとの和解が成立

 

■ポイント

労働基準法第37条で定められている割増賃金を支払っているかどうかを判断する際は、次の2点をクリアしているかどうかがポイントになると示されています。

 

「通常の労働時間の賃金に当たる部分」と「割増賃金に当たる部分」を判別できるかどうか。

 

の判別ができる場合に、実際に割増賃金として支払われた金額が、労働基準法第37条で定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないかどうか。

 

それでは、上記を踏まえて、令和3年労働基準法 選択式の問題を見ていきます。

 

■令和3年 選択式(労働基準法)

最高裁判所は、歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払により労働基準法第37条の定める割増賃金が支払われたといえるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、【 B 】に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、【 B 】に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である[(略)]。そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり[(略)]、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、[(略)]同条の趣旨を踏まえ、【 C 】等にも留意して検討しなければならないというべきである。」

 

【 B 】の選択肢候補

7)家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金   

11)通常の労働時間の賃金 

13)当該歩合給                

17)平均賃金にその期間の総労働時間を乗じた金額

 

【 C 】の選択肢候補

12)当該手当に関する労働者への情報提供又は説明の内容

14)当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け

15)同種の手当に関する我が国社会における一般的状況    

20)労働者に対する不利益の程度

 

答え

B:(11)通常の労働時間の賃金

C:(14)当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け

 

問題の解き方を解説していきます。

 

問題文を絞る(必要な項目に着目する)

最高裁判所は、歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払により労働基準法第37条の定める割増賃金が支払われたといえるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、【 B 】に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、【 B 】に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である[(略)]。

 

 

問題文の前段の「最高裁判所は、」から4行目の「次のように例示した。」までは、「割増賃金が支払われたといえるか否かが問題となった事件」がポイントになります。

1行目から1字1句凝視して理解する必要はありません。

 

5行目以降に進みます。

ポイントは、2つあります。

 

1つは、「割増賃金として支払われた金額が、【 B 】に相当する部分の金額を基礎」

つまり、割増賃金は、【 B 】を基礎に支給されている。

 

もう一つは、

賃金の定めについては、

【 B 】に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要

 

つまり、

「割増賃金は、【 B 】の金額を基礎にしており、【 B 】と割増賃金との部分を判別することが必要。」ということになります。

 

【 B 】の選択肢候補から確認すると

7)家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金   

11通常の労働時間の賃金 

13)当該歩合給                

17)平均賃金にその期間の総労働時間を乗じた金額

 

(7)(13)(17)とも該当せず、(11)「通常の労働時間の賃金」が正解になります。

 

続いて【 C 】に進みます。

そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり[(略)]、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、[(略)同条の趣旨を踏まえ、【 C 】等にも留意して検討しなければならないというべきである。」

 

 

内容を絞ると

諸手当の支払いの根拠については、労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきで、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、同条の趣旨を踏まえ、【 C 】等にも留意して検討しなければならないというべきである。

 

【 C 】の選択肢候補

12)当該手当に関する労働者への情報提供又は説明の内容

14)当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け

15)同種の手当に関する我が国社会における一般的状況    

20)労働者に対する不利益の程度

 

12)は、「情報提供又は説明の内容」ということで、趣旨が少しずれています。

15)は、「我が国社会における一般的状況」ということで、留意して検討する内容としては広すぎます。

20)は、程度の問題で判断するのは、客観的でありません。

 

 

14)に関しては、他の選択肢と比較して、検討する事項としては、最も適切な内容になり(14)が正解になります。