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令和3年 厚生労働白書 公的年金制度

5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立(p299

 

公的年金制度は、予測することができない将来のリスクに対して、社会全体であらかじめ備えるための制度であり、現役世代の保険料負担により、その時々の高齢世代の年金給付をまかなう世代間扶養である賦課方式を基本とした仕組みで運営されている。

 

賃金や物価の変化を年金額に反映させながら、生涯にわたって年金が支給される制度として設計されており、必要なときに給付を受けることができる保険として機能している。

 

直近の公的年金制度の適用状況に関しては、被保険者数は全体で6,762万人2019 (令和元)年度末)であり、全人口の約半数にあたる。

 

被保険者の種別ごとに見てみると、 いわゆるサラリーマンや公務員等である第2号被保険者等が4,488万人2019年度 末)と全体の約65を占めており、自営業者や学生、厚生年金が適用されていない被用者等である1号被保険者が1,453万人、いわゆる専業主婦(夫)等である第3号被保険者は820万人2019年度末)となっている。

 

被保険者数の増減について見てみると、2号被保険者等は対前年比60万人増で、近年増加傾向にある一方、第1号被保険者や第3号被保険者はそれぞれ対前年比18万人、26万人減で、近年減少傾向にある。

 

これらの要因として、後述する被用者保険の適用拡大や厚生年金の加入促進策の実施、高齢者等の就労促進などが考えられる。

また、公的年金制度の給付の状況としては、全人口の3にあたる4,040万人2019 年度末)が公的年金の受給権を有している

 

高齢者世帯に関してみれば、その収入の約6 割を公的年金等が占めるとともに、約5割の世帯が公的年金等による収入だけで生活しており、年金給付が国民の老後生活の基本を支えるものとしての役割を担っていることがわかる。

 

公的年金制度については、2004(平成16)年の年金制度改革により、中長期的に持続可能な運営を図るための財政フレームワークが導入された。

 

具体的には、基礎年金国庫負担割合の引上げと積立金の活用により保険料の段階的な引上げ幅を極力抑えた上で、保険料の上限を固定し、その保険料収入の範囲内で年金給付をまかなうことができるよう、給付水準について、前年度よりも年金の名目額を下げずに賃金・物価上昇の範囲内で自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)が導入された。

 

保険料の段階的な引上げについては、国民年金の保険料は2017(平成29)年4月に、 厚生年金(第1号厚生年金被保険者)の保険料率は20179月に、それぞれ完了した。

 

これにより、消費税率の引上げ(5→8%)による財源を充当した基礎年金国庫負担率の2分の1への引上げとあわせ、収入面では、公的年金制度の財政フレームは完成をみた。

 

一方、給付面では、マクロ経済スライドについて、前年度よりも年金の名目額を下げない という措置は維持しつつ、未調整分を翌年度以降に繰り越して調整するように、調整ルールの見直しが行われている

 

 2021(令和3)年度の保険料水準は、厚生年金保険料率が18.3%、国民年金保険料が 16,610円となっている。

 

一方、同年度の給付水準は、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)が月額220,496円、国民年金(1人分の老齢基礎年金(満額)が月額65,075となっている。