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令和元年 労働基準法 問1 事例問題

51回 2019年 労働基準法第1問の問題の解き方を含めて解説をしていきます。

 

労働基準法の第1問からいきなり事例問題が出題されて戸惑った受験生も多かったことかと思います。

 

事例問題に対して苦手意識を持たれている受験生であれば、他の問題から進める方が得策です。

最初から苦手意識のある問題に手を出す必要はありません。

 

 

労働基準法の1問目は、総則等からの出題と期待してページを開いた受験生も多いと思いますが、平成20年以降の労働基準法の総則等からの出題は下記のようになっています。

 

平成29年以降総則等以外からの出題になっています。

それでは問1を確認していきます。

 

〔問  1〕 次に示す条件で賃金を支払われてきた労働者について 720 日に、労働基準法第 12 条に定める平均賃金を算定すべき事由が発生した場合、その平均賃金の計算に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

【条件】

賃金の構成:基本給、通勤手当、職務手当及び時間外手当

賃金の締切日: 基本給、通勤手当及び職務手当については、毎月 25

時間外手当については、毎月 15

賃金の支払日:賃金締切日の月末

 

(A)326日から625日までを計算期間とする基本給、通勤手当及び職務手当の総額をその期間の暦日数92で除した金額と416日から715日までを計算期間とする時間外手当の総額をその期間の暦日数91で除した金額を加えた金額が平均賃金になる。

 

(B)4月、 5月及び 6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

 

(C)326日から625日までを計算期間とする基本給及び職務手当の総額をその期間の暦日数92で除した金額と416日から715日までを計算期間とする時間外手当の総額をその期間の暦日数91で除した金額を加えた金額が平均賃金になる。

 

(D)通勤手当を除いて、 4月、5月及び6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

 

(E)時間外手当を除いて、4月、5月及び6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

 

事例問題に関しては、ほとんどの場合、5肢共通のテーマになるのでまずは、テーマから押さえていきます。

〔問  1〕 次に示す条件で賃金を支払われてきた労働者について 720 日に、労働基準法第 12 条に定める平均賃金を算定すべき事由が発生した場合、その平均賃金の計算に関する記述のうち、正しいものはどれか

 

問1のテーマは、「平均賃金の計算に関しての正誤」ということが読み取れます。

 

次に、条件を確認していきますが、ここでは条件を掘り下げません。

具体的に、7月20日を事由発生日にして、賃金の締切日や支払日を記載してしっかり理解する必要はありません。

(時間が思いのほか経過します。)

 

 

条件に関しては、軽く目を通すだけで掘り下げません。

 

次に、各選択肢を確認していきます。

1回目の確認の仕方として重要なのが、

正誤の判断が可能な選択肢を見つけること」です。

 

 

それでは、(A)から確認します。

(A)326日から625日までを計算期間とする基本給、通勤手当及び職務手当の総額をその期間の暦日数92で除した金額と416日から715日までを計算期間とする時間外手当の総額をその期間の暦日数91で除した金額を加えた金額が平均賃金になる。

具体的な期間が記載されているので、ここでも目を通すだけで中身は掘り下げません。

 

間違っても歴日数の9291が正しいかどうか数えてはいけません。

(最後の最後に確認します。)

なかなか手ごわい内容なので、△で保留にします。

(Aが正解の肢になりますが、正解の肢を正解と認識するのは、一時期話題になった「悪魔の証明」と同様に時間をかけて困難です。)

 

次に、(B)の問題

(B)4月、 5月及び 6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

事例の場合、賃金締切日が2つあるにもかかわらず、計算期間が1つしかないのは(A)との比較でも違和感があるので△で保留。

(C)の問題

(C)326日から625日までを計算期間とする基本給及び職務手当の総額をその期間の暦日数92で除した金額と416日から715日までを計算期間とする時間外手当の総額をその期間の暦日数91で除した金額を加えた金額が平均賃金になる。

 

(C)では、2つの計算期間に分かれていることがわかります。

ということは、(B)の問題とは、相反する内容で(A)に近い論点ですが、(A)と異なり

「基本給及び職務手当」と続く「職務手当」が抜け落ちているので、平均賃金の算出としては不備なので誤りになります。

 

(D)の問題

(D)通勤手当を除いて、 4月、5月及び6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

きなり、「通勤手当を除いて」と記載されていますが、平均賃金の計算は、賃金総額で計算します。当然通勤手当も賃金なので明らかに誤りの肢になります。

 

(E)の問題

(E)時間外手当を除いて、4月、5月及び6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

(E)の選択肢も(D)の問題同様に時間外手当も賃金総額に含まれるので明らかに誤りです。

 

 

1回目の確認で、(C)(D)(E)が誤りで、残りの(A)と(B)のどちらかの肢に絞り込むことができます。

 

1回目で、(B)があるので先に(B)を確認します。

 

 

(B)4月、 5月及び 6月に支払われた賃金の総額をその計算期間の暦日数92で除した金額が平均賃金になる。

 

ここから、深堀をします。

 

条件を確認すると下記のように、賃金締切日は2つあります。

賃金の締切日:

・基本給、通勤手当及び職務手当については、毎月 25

・時間外手当については、毎月 15

 

上記の様に、時間外手当に関しては、毎月15日が締切日で、算定事由発生の直前の賃金締切日は、7月15になるので、3月間とは、5月、6月、7月の3カ月間になるので(B)は誤りになります。

 

 

最後に(A)の問題

(A)326日から625日までを計算期間とする基本給、通勤手当及び職務手当の総額をその期間の暦日数92で除した金額と416日から715日までを計算期間とする時間外手当の総額をその期間の暦日数91で除した金額を加えた金額が平均賃金になる。

 

 

既に(B)で確認した通り、2つの賃金締切日による中身も確認済みで、残りは、歴日数の日数が正しいかどうかです。

 

 

ただし、(B)~(E)が明らかに誤りなので、歴日数は最後の最後の確認ということになります。

最後に、2019年問1の問題を解く前提の知識として、賃金の項目ごとに賃金締切日が異なる場合の平均賃金の起算日に関しては

平成27年問2Eに出題されています。

賃金締切日が、基本給は毎月月末、時間外手当は毎月20日とされている事業場において、例えば6月25日に算定事由が発生したときは、平均賃金の起算に用いる直前の賃金締切日は、基本給、時間外手当ともに基本給の直前の締切日である5月31日とし、この日から遡った3カ月が平均賃金の算定期間となる。

 

 

上記は、誤りになります。

(解説)基本給に関しては、基本給の直前の締切日である5月31日、時間外手当は、6月20日を賃金締切日とし、それぞれの締切日から遡った3カ月が平均賃金の算定期間となる。

 

 

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