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平成29年度版 厚生労働白書

p106 介護保険

(介護保険制度:高齢者の介護を社会全体で支える仕組み)

介護保険制度は、年をとったときに、脳梗塞などの病気やけがをして、寝たきりをはじめ身体が不自由になったり、あるいは認知症を発症したりして、介護が必要になった場合に、一定の自己負担で介護サービス事業者の提供するサービスを受けることができる制度である。

 

介護保険制度は、高齢化の進展に伴う介護ニーズの増大や、介護期間の長期化核家族化の進行介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況の変化を踏まえ、2000(平成12)年、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設されたものである。

 

介護保険制度は、高齢期の要介護というリスクをカバーしているが、介護サービスの利用による介護負担の軽減により、要介護者を抱える家族にとっても、就業や社会参加が可能になるという効果も期待できるものである。

 

(基本的な仕組み)

介護保険制度は、市町村(特別区を含む。)が運営主体(保険者)となり、国と都道府県が重層的に市町村を支援する体制となっている

介護保険制度の被保険者は、原則として全ての40歳以上の者であり、65歳以上の者は第1号被保険者40歳から64歳までの者は第2号被保険者となる。

 

1号被保険者と第2号被保険者は、保険料の算出方法やサービスの受給要件が異なっている。介護サービスについては、第1号被保険者は原因を問わず要支援・要介護状態となったときに、第2号被保険者は特定疾病が原因で要支援・要介護状態となったときに、受けることができる。

 

介護サービスを受けるに当たっては、市町村の認定が必要である。

この認定に基づき、介護(予防)サービスの利用計画(ケアプラン)が作成され、サービスが提供される。

 

(保険料:第1号被保険者は所得段階別の定額保険料)

1号被保険者の保険料は、各市町村において、介護給付費の22を乗じた値を、当該市町村の第1号被保険者数で除した介護保険料基準額をもとに、市町村民税の課税状況などに応じて段階的に設定されている。

また、2015(平成27)年4月から、低所得者の保険料について公費を投入して保険料軽減を拡充している。

 

20152017(平成29)年度の保険料の基準額の全国平均は、月額5,514である。

2号被保険者の保険料は、介護納付金として人数に応じて医療保険者に賦課しており、

各医療保険者を通じて徴収される。

2017年度の協会けんぽにおける介護保険料率は1.65%である。

 

(介護サービスの給付、自己負担:所得に応じた負担)

介護保険で提供されるサービスは、在宅サービスから施設サービスまで様々なものがある。サービスの利用に当たっては、原則として利用者の負担は1であり、一定以上の所得がある場合、2負担となる。

また、高額介護(介護予防)サービス費という仕組みがあり、月々の介護サービス費の自己負担額が世帯合計(個人)で上限額を超えた場合に、その超えた額が払い戻される。上限額は所得段階に応じて設定されている。

 

また、施設入所などにかかる費用のうち、食費及び居住費は原則として本人の自己負担となっているが、低所得者への配慮から、食費・居住費について、住民税非課税世帯である入所者については、所得に応じた負担限度額を設定し、標準的な費用の額負担限度額と

の差額を給付している。

 

(介護給付費・認定者数の動向)

介護保険制度は、制度創設以来、65歳以上被保険者数が20004月末の2,165万人か

2016(平成28)年4月末には3,378万人へと1.6倍に増加する中で、サービス利用者も20004月末の149万人から20164月末には496万人へと3.3倍に増加している。

このように、介護保険制度は、我が国の高齢者の介護に無くてはならないものとして定着・発展してきているが、今後、更なる高齢化の進行が見込まれる中で、制度を持続可能なものにしていくことが求められている。

 

(利用者負担についての見直し:負担能力に応じた負担)

介護保険制度の持続可能性を高めるとともに、世代内・世代間の負担の公平、負担能力に応じた負担を求める観点から、次のような見直しを行う予定である。

住民税が課税されている方の高額介護サービス費の自己負担上限額について、20178月から37,200円から44,400に引き上げるとともに、20188月から特に所得の高い層の負担割合を2割から3に引き上げることとしている。

高額介護サービス費の引上げに当たっては、長期利用者に配慮し、1割負担のみの世帯については、

新たに446,400円の年間上限額を設けるとともに、高額医療介護合算制度の負担上限額を据え置く、現役並み所得の方の高額介護サービス費の自己負担上限額については44,400円のまま据え置くという配慮を行うこととしている。

 

さらに、第2号被保険者の保険料について、介護納付金として人数に応じて医療保険者に賦課されているが、世代内の負担の公平、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、20178月から、被用者保険間では、報酬額に比例して負担する予定である。なお、この見直しについては、激変緩和の観点から、段階的に導入することとしている。

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