厚生労働白書対策 vol.01

公的年金制度は、現役世代の保険料負担により、その時々の高齢世代の年金給付をまかなう世代間扶養の仕組みにより運営されており、賃金や物価の伸びなどに応じてスライドした年金を終身にわたって受けることができるという特長を有している。


現在では、国民の約3割(約3,867万人(2011(平成23)年度))が公的年金を受給し、高齢者世帯の収入の7割を公的年金が占めるなど、国民の老後生活の柱としての役割を担っている。

(1)社会保障・税一体改革と年金制度改正
現行の社会保障制度の基本的な枠組みが構築された1960年代に比べ、今日では、少子高齢化、雇用環境の変化、家族のあり方の変容、経済の停滞といった、社会保障制度の前提となる社会経済情勢が大きく変わってきている。

こうした状況変化を踏まえ、社会保障の機能を強化するとともに、全世代を通じた国民
の安心を確保し、持続可能な社会保障制度の構築を目指すための社会保障・税一体改革
行われている。

 

(2)残された課題への対応
2012(平成24)年度に行った年金関連四法の成立により、2004(平成16)年の制度改正で導入された、上限を固定した上での保険料の引上げ、基礎年金国庫負担割合の2分の1の恒久化、積立金の活用、マクロ経済スライドによる給付水準の調整からなる財政フレームワークが完成し、長期的な給付と負担の均衡を確保して持続的な制度運営を行う基礎が整ったといえる。

一方、社会保障・税一体改革の議論の中で、引き続き検討することとされた課題などについては、長期的な持続可能性をより強固にすることと、社会経済状況の変化に対応したセーフティネット機能を強化するという観点からの検討が必要である。

 

(3)年金積立金の管理・運用
1年金積立金の管理・運用の考え方
年金積立金は、国民の皆様からお預かりした保険料のうち、年金給付に充てられなかったものを積立金として安全かつ効率的に運用し、現在及び将来の年金給付に充てることにより、年金財政を安定化させているものである。

 

この年金積立金は、厚生労働大臣が年金積立金管理運用独立行政法人(以下「管理運用人」という。)に寄託することにより管理・運用されている。
管理運用法人は、厚生労働大臣から示された中期目標を達成するために、基本的な資産の構成割合(基本ポートフォリオ)を含む中期計画や、運用の具体的な方針を策定し、これらに基づき、年金積立金を国内外の株式・債券に分散して投資することにより、管理・運用を行っている。

 

実際の市場での運用は、管理運用法人から民間の運用受託機関(信託銀行や投資顧問会社)に委託して行っており、管理運用法人は、その運用受託機関の選定、運用状況などについての評価、その結果に基づく解約などの、運用受託機関の管理を行っている。

2直近の運用状況について
年金積立金の運用状況については、長期的な観点から見ることが必要であるが、透明性を確保する観点から、四半期ごとに公表を行っている。

直近では、2012(平成24)年度の運用状況が公表されており、通期で収益率は約10.2%、収益額は約11.2兆円の黒字となっている。

 

なお、厚生労働大臣が自主運用を開始した2001(平成13)年度から2011(平成23)年度までの累積の収益率は名目賃金上昇率を平均で約2.2%上回っており、年金財政上の前提を上回っている。