労働基準法 法24条 [賃金の支払い]


[平成22年 問3-A]
賞与を支給日に在籍している者に対してのみ支給する旨のいわゆる賞与支給日在籍要件を定めた就業規則の規定は無効であり、支給日の直前に退職した労働者に賞与を支給しないことは、賃金全額払の原則を定めた労働基準法第24条第1項に違反するとするのが最高裁判所の判例である。

 

[解答] 誤り(法24条、大和銀行事件 昭和57年10月7日最高裁判決)
☑ 前半の論点の賞与はその支給日現在の在籍者にのみ支給する旨の就業規則は有効で正しい。
☑ 退職後を支給日とする賞与については
⇒受給権を有しないというのが最高裁判所の判例。


[平成22年 問3-D]

労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則は、労働者が退職に際し自ら賃金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、その意思表示の効力を否定する趣旨のものと解することができ、それが自由な意思に基づくものであることが明確であっても、賃金債権の放棄の意思表示は無効であるとするのが最高裁判所の判例である。


[解答] 誤り(法24条、シンガー・ソング・メシーン事件)
☑ 賃金に当る退職金債権放棄の意思表示
⇒労働者の自由な意思に基づくものと認められる合理的な理由が客観的に存在するときは有効。
☑ 労働者が退職に際し自ら退職金債権を放棄する旨の意思表示の効力
⇒「賃金の全額払いの原則に反しない。」というのが最高裁判所の判例。


[平成21年 問4-A]
賃金は通貨で支払わなければならず、労働協約に定めがある場合であっても、小切手や自社製品などの通貨以外のもので支払うことはできない。

 

[解答] 誤り(法24条)
☑ 支払うことは「できる」ので誤り。
☑(原則)賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払う。
☑(例外)法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合、通貨以外のもので支払うことが可能。


[平成21年 問4-B]
賃金は直接労働者に支払わなければならず、労働者の委任を受けた弁護士に賃金を支払うことは労働基準法第24条違反となる。

 

[解答] 正解  (法24条、昭和63年3月14日基発150号)
☑ 直接労働者に支払わなければならない。
☑ 労働者の親権者その他の法定代理人、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、賃金の直接払いの原則に違反。


[平成21年 問4-C]
労働者が賃金債権を第三者に譲渡した場合、譲渡人である労働者が債務者である使用者に確定日付のある証書によって通知した場合に限り、賃金債権の譲受人は使用者にその支払を求めることが許されるとするのが最高裁判所の判例である。

 

[解答] 誤り(電電公社小倉電話局事件 昭和43年3月12日最高裁判決)
☑ 「労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお法24条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならない。
したがつて、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されない」とするのが最高裁判所の判例。


[平成21年 問4-D]
労働基準法第24条第1項の定めるいわゆる賃金全額払の原則は、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであり、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて得た利益を、使用者が支払うべき解雇無効期間中の賃金額から控除して支払うことはおよそ許されないとするのが最高裁判所の判例である。

 

[解答] 誤り(あけぼのタクシー事件 昭和62年4月2日最高裁判決)
☑ 使用者の責めに帰すべき事由で解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて利益を得た場合
⇒「使用者は当該労働者に解雇無効期間中の賃金を支払うにあたり、平均賃金の6割を超える部分の賃金額から解雇無効期間中に得た利益の額を控除して支払うことができる」とするのが最高裁判所の判例。


[平成20年 問3-A]
使用者は、賃金を通貨で支払わなければならないが、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。


[解答] 誤り(法24条1項)
☑ 通貨払いの原則の例外として認められているのは
・法令による別段の定めがある場合(現在のところ規定なし)
・労働協約に別段の定めがある場合
・賃金の口座振込みによる場合(一定の要件あり)
・退職金について金融機関支払小切手等で支払する場合
☑ 設問のように労使協定により通貨以外の方法で支払うことは認められていない。
☑ 労使協定を締結した場合には、賃金の一部を控除が認められている。
労使協定と労働条約の入れ替え問題に注意。


[平成20年 問3-B]
使用者は、賃金を、銀行に対する労働者の預金への振込みによって支払うためには、当該労働者の同意を得なければならない。


[解答] 正解(法24条1項、則7条の2第1項)
☑ 同意については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わない。


[平成20年 問3-D]
賃金は、直接労働者に、支払わなければならないが、未成年者の親権者又は後見人は、その賃金を代わって受け取ることができる。


[解答] 誤り(法24条1項、法59条)
☑ 前段の論点は正しい。
☑ 後半の論点の親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ることはできないのであやまり。
☑ 使者に対して賃金を支払うことは差し支えない。


[平成20年 問3-E]
使用者は、賃金の全額を支払わなければならないが、労働協約に別段の定めがある場合に限って、賃金の一部を控除して支払うことができる。


[解答] 誤り(法24条1項)
☑ 「労働協約に別段の定めがある場合に限って」ということはないので誤り。


[平成18年 問2-A]

労働基準法第24条第1項本文においては、賃金は、その全額を支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令又は労働協約に別段の定めがある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができると規定されている。

 

[解答] 誤り (法24条1項)
☑ 労働協約ではなく労使協定にすれば正しい。

☑ 設問の法令又は労働協約に別段の定めがある場合

⇒通貨以外のもので支払う(現物給与)ことが可能。


[平成18年 問2-B]

最高裁判所の判例によると、労働基準法第24条第1項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づき当該相殺に同意した場合においては、当該同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、当該同意を得てした相殺は当該規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である、とされている。


[解答] 正解(法24条 日新製鋼事件 平成2年11月26日最高裁判決)
 ☑ 原則、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止

ただし、「労働者がその自由な意思に基づき相殺に同意した場合に、その同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、その同意を得てした相殺は同規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である。」と判断している。


【平成17年 問1-B】

毎月15日に当月の1日から月末までの賃金を支払うこととなっている場合において、月の後半に2日間の欠勤があり賃金を控除する必要が生じたときは、過払いとなる賃金を翌月分の賃金で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、労働基準法第24条の賃金の支払いに関する規定(賃金全額払の原則)の違反とは認められない。

 

[解答] 正解(法24条1項、福島県教組事件 昭和44年12月18日最高裁判決)
☑ 「その調整の時期、金額、方法等から見て、労働者の経済的生活の安定との関係上、不当と認められない場合は、賃金全額払の原則に違反しない。]と言うのが判例の概略。


【平成17年 問1-C】
最高裁の判例によると、労働基準法第24条第1項ただし書の要件を具備する「チェック・オフ(労働組合費の控除)」協定の締結は、これにより、同協定に基づく使用者のチェック・オフが同項本文所定の賃金全額払の原則の例外とされ、同法第120条第1号所定の罰則の適用を受けないという効力を有するにすぎない、とされている。

 

[解答]正解(法24条1項但書、エッソ石油事件平成5年3月25日最高裁判決)
☑ チェック・オフ協定の締結は、本来は、法24条の賃金の支払の規定違反。

ただし、罰則の適用を受けないという、免罰効果を有するにすぎない。

☑ つまり、チェック・オフ協定が労働協約の形式で締結ても、当然に使用者がチェック・オフする権限を取得するものではなく、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものでもない。
☑ 組合員は、使用者に対していつでもチェック・オフの中止を申出ができ、その場合は、使用者はその組合員に対するチェック・オフを中止する必要がある。


【平成15年 問3-B】

1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除した額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うことは、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。


[解答] 正解(法24条、昭和63年3月14日基発150号)
☑  設問の場合は、事務の便宜上の取扱いと認められ、賃金全額払いの原則に違反しない。
☑ 1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月に繰り越した場合

⇒ 違法ではない。


【平成15年 問3-D】

裁判所は、労働基準法第26条(休業手当)、第37条(割増賃金)などの規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができることとされているが、この付加金の支払に関する規定は、同法第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しても、同様に適用される。


[解答] 誤り(法24条、法26条、法37条、)

☑ 賃金全額払の義務違反に対して、付加金の支払いに関する規定は適用なし。
☑  法114条の付加金の支払いに関する規定

⇒「解雇予告手当」、「休業手当」、「割増賃金」、「年次有給休暇の賃金」


【平成15年 問3-E】

労働安全衛生法第66条の規定による健康診断の結果に基づいて、使用者が、ある労働者について、私傷病のため、同法第66条の5第1項の定めるところに従い、健康診断実施後の措置として労働時間の短縮の措置を講じて労働させた場合には、使用者は、当該労働者に対し、労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない。


[解答] 正解( 法24条、法26条、昭和63年3月14日基発150号)

☑ 労働しなかった時間に関しては当然賃金を支払う必要はない。 


[平成14年 問3-E]

労働基準法第24条第1項においては、賃金は、通貨で支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令に別段の定めがある場合、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができると規定されている。

 

[解答] 誤り(法24条1項)
☑ 設問のように労使協定を締結しても賃金を通貨以外のもので支払うことは認められないので誤り。


【平成13年 問3-C】

賃金の所定支払日が休日に該当する場合は、労働基準法第24条第2項に規定する一定期日払いの原則によって、当該支払日を繰り下げることはできず、繰り上げて直近の労働日に支払わなければならない。


[解答] 誤り(法24条2項)
☑ 賃金支払日が休日に該当する場合

⇒その支払日を繰り下げても、繰り上げても違法ではない。


【平成13年 問3-D】

使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金をその労働者の指定する銀行その他の金融機関の口座に振り込むことができる。そして、当該事業場の労働者の過半数を組織する労働組合がある場合には、この労働組合との労働協約をもってこの労働者の同意に代えることができる。
[解答] 誤り(法24条1項)

☑ 前半の論点は正しい。後半の論点のように、労働協約をもって個々の労働者の同意に代えることはできない。


【平成13年 問3-E】

定期賃金を、毎月の末日というような特定された日に支払うこと、又は毎月の第4金曜日というような特定された曜日に支払うことは、労働基準法第24条第2項に規定する賃金の一定期日払いの原則に違反しない。


[解答] 誤り(法24条2項)

☑「毎月の末日」という定め方⇒違法ではない。
☑「毎月第4金曜日」というような定め方⇒賃金支払日が特定されたことにはならない。


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