(法1条)目的
労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。 労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。 |
(法2条の2)労災保険事業 労働者災害補償保険は、第1条の目的を達成するため、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。 |
(法3条1項)強制適用事業 労働者災害補償保険法では、労働者を使用する事業を適用事業という。 |
●個人経営の農林水産(船員を使用して行う船舶所有者の事業を除く)で、下記に掲げるもの
⇒暫定任意適用事業
農業 |
常時使用労働者数 5人未満 |
+ |
①一定の危険又は作業を主として行う事業 ②特別加入をしている事業主が行う事業以外の事業 |
林業 | 常時労働者を使用しない | 年間使用延労働者数⇒300人未満 | |
水産業 |
常時使用労働者数 5人未満 |
①総トン数5トン未満の漁船 ②災害発生のおそれの少ない河川、湖沼又は特定の水面において主として操業する者 |
①国の直営事業(国有林野事業)
②官公署の事業
【業務上の認定】
業務上の傷病等と認められるには⇒「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たす必要がある。
「業務遂行性」:労働契約に基づき、労働者が事業主の支配下にある状態。
「業務起因性」:業務と傷病等の間の一定の因果関係。
例えば、
●「粉じんを飛散する場所での業務によるじん肺」は業務との因果関係が確立し
⇒労働基準法施行規則別表1の2第1から10号に例示列挙されている。
●因果関係が確立していない疾病(例示列挙されていない)
⇒同別表11号において「その他業務に起因することの明らかな疾病」として、包括的救済規定が設けられている。
【業務災害具体例】
①作業中
(原則)作業中に発生した災害は業務災害
(例外)恣意的行為、私的行為、天災地変等がげんいんであれば、業務上とされないケースもある。
(過去問)
●資材置き場に乱雑に荷下ろしされている小型パイプの整理中に、付近の草むらに探しに入った配管工が、この地に多く棲息するハブに咬まれて負傷。⇒業務上と認定
②作業中断中
用便や飲水等の生理的行為、突発的な原因による反射的行為⇒業務に付随する行為として、その行為中に生じた災害は業務災害に
(過去問)
●トラックの貨物運送中に、国道上で荷台のシートがめくれたため、トラックを停止し、トラック助手でる労働者がシートをかけなおした。そのとき強風が吹き、防寒帽が飛ばされ、帽子を追いかけた際、前方より疾走してきた自動車に跳ね飛ばされ死亡⇒業務上と認定
③作業に伴う必要行為又は合理的行為中
(法7条2項)
通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。 |
(法7条3項) 逸脱・中断 (原則)労働者が、通勤に係る移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤としない。 (例外)当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、通勤の経路に復した後は、通勤とみなす。 |
(第8条) 給付基礎日額 (原則)労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とする。 (特例)平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるとき ⇒所轄労働基準監督署長が算定 |
●自動変更対象額⇒給付基礎日額の最低基準額のこと。
(原則)
⇒原則又は給付基礎日額の特例で算出した額が、自動変更対象額(3,950円)に満たない場合
⇒この自動変更対象額が給付基礎日額とする。
●厚生労働大臣は、年度の平均給与額が直近の自動変更対象額の変更年どの前年度の平均給与額と比べ変動した場合
⇒翌年度の8月1日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。
自動変更対象額は、毎年7月31日までに変更される場合に告示。
【スライド制の趣旨】
労災保険年金額については、原則として算定事由発生日(被災日)の賃金を基に算定した給付基礎日額に給付の種類等に応じた給付日数を乗じて算定。
しかし、年金は長期にわたって給付することになるため、被災時の賃金によって補償を続けていくと、その後の賃金水準の変動が反映されないことになり、公平性を欠いてしまいます。
このため、労災保険では、給付基礎日額を賃金水準の変動に応じて改定する制度(スライド制)を取り入れている。
【スライドによる金額の改定】
一般の労働者一人あたりの平均給与額の変動率を基準として、厚生労働大臣が定める改定率(スライド率)により、翌年度の8月1日以降に支給すべき年金給付について行われる。
【スライド率の算定方法】
スライド率の算定は、算定事由発生日(被災日)の属する年度の平均給与額と、支給年度の前年度の平均給与額(平成24年8月1日からの1年間のスライド率であれば平成23年度の水準)を比較して計算される。
【休業給付基礎日額のスライド制】
適用 |
四半期ごとの平均給与額が、算定事由発生日の属する四半期の平均給与額の100分の110を超え又は100分の90を下回るに至ったとき ⇒スライド率を給付基礎日額に乗じて得た額を休業給付基礎日額とする。 |
改定 時期 |
平均給与額が10%を超えて変動した四覇気の翌々四半期 |
【業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給】
1.療養補償給付
2.休業補償給付
3.障害補償給付
4.遺族補償給付
5.葬祭料
6.傷病補償年金
7.介護補償給付
(第13条) 療養補償給付 (原則)療養補償給付は、療養の給付(現物給付) 【療養の給付の範囲】
①診察
(例外)療養の費用の支給 ●療養の給付をすることが困難な場合 ●療養の給付を受けないことについて労働者に相当の理由がある場合 ⇒療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。 |
療養の給付(現物給付) | 療養の費用の支給(現金給付) | |
実施 | 指定病院等 | 指定病院等以外の医療機関 |
支給額 | 全額 | 全額 |
請求 |
「療養補償給付たる療養の給付請求書」 を指定病院等を経由して、 所轄労働基準監督署長へ提出 |
「療養補償給付たる療養の費用請求書」 を直接、 所轄労働基準監督署長へ提出 |
(第14条)
休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給する。 |
(法12条の8第3項) 傷病補償年金
傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後1年6箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。 |
(法12条8第4項)介護補償給付 介護補償給付は、次の要件を満たす労働者に対して、その請求に基づいて支給 ①障害補償年金又は傷病補償年金を受ける権利を有する労働者 ②障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害であって厚生労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態 ③常時又は随時介護を受けているとき
ただし、下記の施設に入所又は入院間は不支給 ②特別養護老人ホーム、原子爆弾被爆者養護ホーム ③病院又は診療所 |
【①その月に介護費用を支出して介護を受けた日がある場合】(②の場合除く)
常時介護 |
随時介護 |
|
原則 | 実費 | |
上 限 額 | 104,730円 | 52,370円 |
【② ①の場合で支出した介護費用の額が、56,790円又は28,400円に満たず、かつ、その月に親族等による介護を受けた日がある場合】
●介護を受け始めた月⇒最低保障額の適用なし。実費のみ支給。
常時介護 | 随時介護 | |
最低保障額 | 56,790円 | 28,400円 |
【③その月に介護費用を支出して介護を受けた日がない場合で、親族等による介護を受けた場合】
●介護を受け始めた月⇒支給は行われず、翌月から支給。
常時介護 | 随時介護 | |
支 給 額 | 56,790円 | 28,400円 |
【介護補償給付の請求】
●障害補償年金を受ける権利を有する者
⇒当該障害補償年金の請求と同時に又は請求後に
●傷病補償年金を受ける権利を有する者
⇒当該傷病補償年金の支給決定を受けた後に行う。
(法15条)障害補償給付 ①障害補償給付は、業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者の負傷、疾病が治ゆした場合に、一定の障害が残ったときに、その請求に基づいて支給される。 ②障害補償給付は、障害等級に応じ、 ●障害補償年金(第1級:給付基礎日額の313日分〰第7級:同131日分 ●障害補償一時金(第8級:同503日分〰第14級:同56日分とする。
|
【障害補償年金の額】
障害等級 | 年金額 | 支給方法 |
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 年6期(偶数月)に分割して支給 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | |
第4級 | 給付基礎日額の213日分 | |
第5級 | 給付基礎日額の184日分 | |
第6級 | 給付基礎日額の156日分 | |
第7級 | 給付基礎日額の131日分 |
【障害補償一時金の額】
障害等級 | 年金額 | 支給方法 |
第8級 | 給付基礎日額の503日分 | 一時金として一括支給 |
第9級 | 給付基礎日額の391日分 | |
第10級 | 給付基礎日額の302日分 | |
第11級 | 給付基礎日額の223日分 | |
第12級 | 給付基礎日額の156日分 | |
第13級 | 給付基礎日額の101日分 | |
第14級 | 給付基礎日額の56日分 |
●準用:障害等級表に掲げられていない場合⇒障害等級表に掲げる同程度の身体障害を準用して決定
●併合:同一の業務災害より、2以上の身体障害を残した場合
⇒重いほうの身体障害に相当障害等級とする。
●併合繰り上げ:同一の業務災害により、第13級以上の身体障害が2以上残った場合
①第13級以上の障害が2以上あるとき⇒重いほうを1級繰り上げる
②第8級以上の障害が2以上あるとき ⇒重いほうを2級繰り上げる
③第5級以上の障害が2以上あるとき ⇒重いほうを3級繰り上げる
※「第9級+第13級」の場合⇒「第8級(503日分」ではなく、
⇒「第9級(391日分)」+「第13級(101日分)」=492日分の障害補償一時金が支給
●加重障害:既に身体障害(業務上外を問わない。)のあった者が、新たに業務上の負傷、疾病(再発を含む)により同一の部位について障害を重くしたときは、その重くなった限度で障害補償給付が支給
(第15条の2)障害補償年金の改定 障害補償年金を受ける労働者の当該障害の程度に変更があり、新たに他の障害等級に該当するに至つた場合には、政府は、新たに該当するに至った障害等級に応ずる障害補償年金又は障害補償一時金を支給し、その後は、従前の障害補償年金は、支給しない。 |
●障害補償年金を受ける権利を有する者の請求に基づいて支給。
支給額 |
最高限度額(第1級給付基礎日額の1,340日分から第7級同560日分)又はその範囲内において 200、400、600、800、1000、1200分から受給権者が選択した額 |
請求 |
(原則)障害補償年金の請求と同時 (例外)障害補償年金の支給決定のあった日の翌日から起算して1年を経過する日までの間は、障害補償年金の請求後でも、請求可能 |
①障害補償年金前払一時金の請求は、同一事由に関して⇒1回のみ
②障害補償年金前払一時金が支給されたとき⇒その前払一時金が支給された月後の各月までに支給されるべき障害補償年金の額の合計額がその前払一時金の額に達するまでの間、障害補償年金は支給停止
障害補償年金前払一時金が支給された月後の最初の障害補償年金の支払期月から
③1年を経過した月以後各月に支給されるべき障害補償年金の額は、年5分の単利で割り引かれる。
●障害補償年金を受ける権利を有する者が死亡した場合
⇒その者に支給された障害補償年金の額及び障害補償年金前払一時金の合計額が、障害補償年金前払一時金に係る最高限度額に満たない時
⇒下記に掲げる者に対して、その請求に基づいて、その差額を支給。
労働者の死亡の当時その者と 生計を同じくしていた |
1.配偶者 |
上記に該当しない |
7.配偶者 8.子 9.父母 10.孫 11.祖父母 12.兄弟姉妹 |
(第16条)遺族補償給付 ①遺族補償給付は、労働者が業務上の事由により死亡した場合に、その遺族に対して、その請求に基づき支給される。 ②遺族補償給付は、遺族補償年金又は遺族補償一時金とする。 |
(第16条の2)遺族補償年金
①遺族補償年金を受けることができる遺族(受給資格者)は、労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していたものとする。
1.夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、60歳以上であること。 |
順位 | 遺族 | 要件 |
1 | 妻 | ― |
夫 | 60歳以上又は障害要件 | |
2 | 子 |
18歳の年度末まで 又は障害要件 |
3 | 父母 | 60歳以上又は障害要件 |
4 | 孫 |
18歳の年度末まで 又は障害要件 |
5 | 祖父母 | 60歳以上又は障害要件 |
6 | 兄弟姉妹 |
18歳年度末又は60歳以上 もしくは障害要件 |
【若年支給停止者】
順位 | 遺族 | 要件 |
7 | 夫 |
若年支給停止者 55歳以上60歳未満 ⇒(障害要件は不該当) |
8 | 父母 | |
9 | 祖父母 | |
10 | 兄弟姉妹 |
遺族数 | 支給額 |
1人 |
給付基礎日額の153日分 ・55歳以上の妻又は障害要件に該当する場合⇒給付基礎日額の175日分 ・妻が55際に達したとき、若しくは障害要件に該当し、又は該当しなくなったとき(55歳以上である時を除く) ⇒その翌月から年金額が改定 |
2人 |
給付基礎日額の201日分 |
3人 | 給付基礎日額の223日分 |
4人 以上 |
給付基礎日額の245日分 |
【失権事由】
①死亡したとき。
②婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
③直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となったとき。
④離縁によって、死亡した労働者との親族関係が終了したとき。
⑤子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く。)。
⑥第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったとき(夫、父母又は祖父母については、労働者の死亡の当時60歳以上であったとき、子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は労働者の死亡の当時60歳以上であったときを除く。)。
【転給】
転給:遺族補償年金の受給権者が失権した場合⇒同順位者がなく、かつ、後順位者があるときは、次順位者に遺族補償年金を支給
(法16条の5)遺族補償年金の支給停止 ①遺族補償年金を受ける権利を有する者の所在が1年以上明らかでない場合には、当該遺族補償年金は、同順位者があるときは同順位者の、同順位者がないときは次順位者の申請によつて、その所在が明らかでない間、その支給を停止する。 ●所在不明時にさかのぼり、その月の翌月から支給を停止。
この場合において、同順位者がないときは、その間、次順位者を先順位者とする。 |
【支給要件】
①遺族補償年金を受ける権利を有する者の請求に基づいて支給
②遺族補償ネ金前払一時金の請求は、同一事由に関し、1回に限られる。
③遺族補償年金前払一時金が支給されたとき
⇒遺族補償年金は支給停止。
支給額 | 200、400、600、800、1,000日分から受給権者が選択した額 |
請求 |
(原則)遺族補償年金の請求と同時に行う (例外)遺族補償年金の支給決定通知のあった日の翌日から起算して1年を経過する日までの間は、遺族補償年金の請求後においても、請求可能 |
【遺族補償一時金の額】
①労働者の死亡当時、遺族補償年金の受給資格者がいない時 | 給付基礎日額の1,000日分 |
②遺族補償年金の受給権者がすべて失権し、かつ、既に支給された遺族補償年金と遺族補償年金前払一時金の額の合計額が 給付基礎日悪の1,000日分に満たない時 |
給付基礎日額の1,000日分と前払い一時金の合計額との差額 |
●葬祭料は、労働者が業務上死亡した時に
⇒葬祭を行う者に対して、その請求の基づいて、下記に掲げる額の内いずれか高いほうの額を支給。
①315,000円+給付基礎日額の30日分
②給付基礎日額の60日分
①療養給付
②休業給付
③障害給付
④遺族給付
⑤葬祭給付
⑥傷病年金
⑦介護給付
●通勤災害に関する保険給付の種類、内容
⇒原則、業務災害に関する保険給付と同じ
(法22条)療養給付 ①療養給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかった場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。 ②療養給付には、療養の給付と療養の費用の支給がある。 ③政府は、療養給付を受ける労働者から一部負担金を徴収する。 一部負担金は、労働者に支給すべき休業給付の額から控除することにより行う。 |
(法22条2)休業給付 ①療養給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかった場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。 |
(法22条の3)障害給付 ①障害給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の負傷又は疾が治ゆした場合に、一定の障害が残ったときに、その請求に基づいて行なう。 ②障害給付は、障害等級に応じ、障害年金又は障害一時金とする。 |
(法22条の4)遺族給付
①遺族給付は、労働者が通勤により死亡した場合に、当該労働者の遺族に対し、その請求に基づいて行なう。 |
(法22条の5)葬祭給付 ①葬祭給付は、労働者が通勤により死亡したときに、葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて支給される。 |
(法23条)傷病等級 |
(法24条)介護給付
①介護給付は、障害年金又は傷病年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害年金又は傷病年金の支給事由となる障害であって、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間(次に掲げる間を除く。)、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。 |
(法26条)二次健康診断等給付 ①二次健康診断等給付は、労働安全衛生法の規定による定期健康診断等のうち、直近のもの(一次健康診断)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、厚生労働省令で定めるものが行われた場合において、当該検査を受けた労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。 |
【二次健康診断】
⇒脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査(前項に規定する検査を除く。)であつて厚生労働省令で定めるものを行う医師による健康診断(1年度につき1回に限る。)
【特定保健指導】
⇒二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる医師又は保健師による保健指導(二次健康診断ごとに1回に限る。)
(法27条)
①二次健康診断を受けた労働者から当該二次健康診断の実施の日から3箇月以内に二次健康診断の結果を証明する書面の提出を受けた事業者は、二次健康診断の決果(異常の所見があると診断された労働者に限る)に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならない。 |
●二次健康診断等給付⇒下記の検診給付病院等で行う
①社会復帰促進等事業として設置された病院又は診療所
②都道府県労働局長の指定する病院又は診療所
●二次健康診断等給付⇒現物給付として支給
【手続の流れ】
二次健康診断等給付を受けようとする者は
⇒「請求書」+「いずれの項目にも異常の所見があると診断されたことを証明する書類」
⇒二次健康診断等給付を受けようとする検診給付病院等を経由して
所轄都道府県労働局長に提出
●上記の請求書は一次健康診断を受けた日から3箇月以内
(法9条)年金の支給期間 |
(法10条)死亡の推定 ①船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗っていた労働者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となつた労働者の生死が3箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合⇒遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日に当該労働者は、死亡したものと推定する。 ②航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその航空機に乗っていた労働者若しくは航空機に乗っていてその航空機の航行中行方不明となった労働者の生死が3箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合にも、同様とする。 |
●未支給の保険給付の請求は、請求権者が自己の名で行う。
●同順位者が2人以上いるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなされる。
遺族(補償)年金 |
遺族(補償)年金を受けることができる他の遺族 ⇒同順位者がいるときは同順位者。いない時は転給による次順位者 |
上記以外 |
死亡した受給権者と生計を同じくしていた ①配偶者 ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母 ⑥兄弟姉妹 |
(法12条)年金の内払
②受給権が消滅した場合 |
(法12条の2)過誤払いによる返還金債権への充当 年金たる保険給付を受ける権利を有する者が死亡し、その受給権が消滅したにもかかわらず、その支給が継続して行われた場合において、過誤払による返還金に係る債権に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき保険給付があるときは、その保険給付の支払金の金額を過誤払による返還金債権の金額に充当することができる。 |
(法12条の5) ①保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。 ②保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。 ただし、年金たる保険給付を受ける権利を独立行政法人福祉医療機構法の定めるところにより独立行政法人福祉医療機構に担保に供することはできる。 |
●租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することはできない。
●特別支給金は、保険給付ではないが、非課税所得として扱う。
(法12条の2の2)
①労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。 |
(法47条の3) 政府は、保険給付を受ける権利を有する者が、正当な理由がなくて、届出をせず、若しくは書類その他の物件の提出をしないとき、又は命令に従わないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。 |
(法31条) 政府は、次の各号のいずれかに該当する事故について保険給付を行つたときは、①業務災害に関する保険給付にあっては労働基準法の規定による災害補償の価額の限度 ②通勤災害に関する保険給付にあっては通勤災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する同法の規定による災害補償の価額の限度 その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。 1.事業主が故意又は重大な過失により保険関係成立届を提出していない期間中であつてこの保険に係る保険関係の成立に係るものをしていない期間(概算保険料の認定決定後の期間を除く。)に生じた事故 2.事業主が概算保険料のうち一般保険料を納付しない期間中(督促状の指定期限後の期間に限る)に生じた事故 3.事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故ー |
(法12条の3) ①偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、政府は、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる。 ②前項の場合において、事業主が虚偽の報告又は証明をしたためその保険給付が行なわれたものであるときは、政府は、その事業主に対し、保険給付を受けた者と連帯して前項の徴収金を納付すべきことを命ずることができる。 |
(法12条の4) ①政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。 |
(法12条の4第2項) 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。 |
(法29条)
政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。
1.療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他業務災害及び通勤災害を被つた労働者(次号において「被災労働者」という。)の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
2.被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業
3.業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業
●特別支給金
⇒特別支給一時金とボーナス特別支給金
【特別支給金の種類】
保険給付 | 特別支給一時金 | ボーナス特別支給金 |
休業(補償)給付 | 休業特別支給金 | - |
傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金 | 傷病特別年金 |
障害(補償)年金 | 障害特別支給金 | 障害特別年金 |
障害(補償)一時金 | 障害特別一時金 | |
障害(補償)年金差額一時金 | - | 障害特別年金差額一時金 |
遺族(補償)年金 | 遺族特別支給金 | 遺族特別年金 |
遺族(補償)一時金 | 遺族特別一時金 |
【特別支給金の金額】
名称 | 金額 |
休業特別支給金 |
1日につき休業給付基礎日額の100分の20 ⇒休業(補償)給付と同じく、待期期間あり。 |
傷病特別支給金 |
傷病等級に応じて 第1級:114万円 第2級:107万円 第3級:100万円 |
障害特別支給金 |
障害等級に応じて 第1級:342万円〰第14級:8万円 |
遺族特別支給金 |
300万円 ・若年支給停止者に対して支給 |
算定基礎年額 | 原則 | 負傷又は傷病の日以前1年間に、労働者に支払われた特別給与(ボーナス)の総額 |
上限 |
原則による金額が ①年金給付基礎日額に365を乗じて得た額の100分の20に相当する額 ②150万円 のうちいずれか低い額を超えるときは、その低い額 |
名称 | 金額 |
傷病特別年金 |
算定基礎日額×傷病等級に応じて定められた日数 第1級:313日分 第2級:277日分 第3級:245日分 |
障害特別年金 |
算定基礎日額×障害等級に応じて定められた日数 第1級:313日分〰第7級:131日分 |
障害特別一時金 |
算定基礎日額×障害等級に応じて定められた日数 第8級:503日分〰第14級:56日分 |
障害特別年金差額一時金 |
障害等級に応じて定められている支給額 (算定基礎日額の1,340日分〰560日分)から、既に支給された障害特別年金の合計額を差し引いた額 |
遺族特別年金 |
算定基礎日額×遺族の数に応じて定められた日数 遺族の数1人:153日分〰遺族の数4人以上:245日分 |
遺族特別一時金 |
算定基礎日額×1,000日 ⇒遺族(補償)年金の受給権者がすべて失権した場合に支給される遺族特別一時金は、下記の計算式による ●算定基礎日額×1,000日分-既に支給された遺族特別年金の額の合計 |
項目 | 保険給付 | 特別支給金 |
受給権の保護 | あり | なし |
不正受給者からの 費用徴収 |
労災保険法の規定による |
労災保険法の規定なし (民事上の手続により返還) |
社会保険との調整 |
調整あり |
調整なし |
事業主からの費用徴収 | 徴収あり | 徴収なし |
第三者行為災害に係る 損害賠償との調整 |
調整あり | 調整なし |
前払一時金制度 | あり | なし |
●特別加入の種類
①中小事業主等の特別加入
②一人親方等の特別加入
③海外派遣者の特別加入
【中小事業主の特別加入の対象者】
①下記に掲げる特定事業の事業主で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している者
(事業主が法人その他の団体であるときはその代表者)
②①の事業主が行う事業に従事する者
【特別加入の要件】
①その事業について、労災保険の保険関係が成立していること
②労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していること
③中小事業主及びその事業に従事する者を包括して加入すること
④政府の承認を受けること
【特定事業】
事業の種類 | 常時使用する労働者の数 |
金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
卸売業・サービス業 | 100人以下 |
その他の事業 | 300人以下 |
【 一人親方等の特別加入の対象者】
①一人親方その他の自営業者及びその家族従事者
②特定作業従事者
⇒一人親方等又は特定作業従事者の団体を適用事業及びその事業主とみなす。
【特別加入の要件】
①一人親方等の
又は特定作業従事者の団体が特別加入の申請をし、政府の承認を受けること
②家族従事者等を包括して加入すること
【一人親方等の具体例】
●一人親方その他の自営業者…下記に掲げる事業を労働者を使用しないで行うもの
①個人タクシー業者
②建設の事業(大工、盛ん、とび等)
③漁船による水産動植物の採捕の事業
④林業の事業
⑤医薬品の配置販売等
●特定作業従事者
①特定農作業従事者
②指定農業機械作業従事者
③職場医適用訓練作業従事者
④労働者を使用しない労働組合等の条金役員
⑤介護作業従事者
【その他】
●海外派遣者を包括して加入させる必要はない。
●海外出張は特別加入ではなく、通常の労災保険が適用
【その他】
●同一の事業又は作業に関して、他の団体を通じて、重ねて特別加入することはできない。
●海外派遣者の特別加入対象者
①海外の開発途上にある地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体が
開発途上にある地域において行われる事業に従事させる為に派遣する者
②日本国内で行われる事業(有期事業を除く)を行う事業主が、海外において行われる事業に従事させるために派遣する者
⇒海外派遣者は、労働者とみなされ、保険給付、社会復帰促進等事業を利用することができる。
【特別加入の要件】
①団体又は事業主の事業について、継続事業としての労災保険の保険関係が成立していること
②政府の承認を受けること
●特別加入者の給付基礎日額は、特別加入の申請の際、厚生労働大臣(所轄都道府県労働局長に権限委任)が特別監修者の希望を聴いて決定。
⇒20,000円、18,000円、16,000円、14,000円、12,000円、10,000円、9,000円、8,000円、
7,000円、6,000円、5,000円、4,000円の範囲内
家族従事者⇒3,500円、3,000円、2,500円、2,000円
●年齢階層別の最低限度額、最高限度額は適用されない。
●特別加入者に係る業務災害、通勤災害の認定
⇒厚生労働省労働基準局長が定める基準による。
①一般労働者との相違点
療養給付 | 一部負担金(原則:200円)は徴収されない。 |
休業(補償)給付 | 「賃金を受けないこと」という要件はない。 |
二次健康診断等給付 | 支給されない。 |
●下記に掲げる者については、通勤災害に関する保険給付は支給されない。
①個人タクシー業者、個人貨物運送業者
②個人水産業者
③特定農作業従事者、指定農業機械作業従事者
④家内労働者
事由 | 対象 | 内容 |
①業務災害の原因である事故が、 事業主の故意又は重大な過失によって 生じたとき |
・中小事業主等 |
政府は、保険給付の 全部又は一部を行わないことができる |
②事故が、特別加入保険料が滞納されている 期間中に生じたものであるとき |
・中小事業主等 ・一人親方等 ・海外派遣者 |
●保険給付に関する決定に不服のある者は
労働者災害補償保険審査官に対して審査請求
↓
その決定に不服のある者は
労働保険審査会に対して再審査請求
審査請求 |
決定のあった事を知った日の翌日から起算して60日以内 ⇒文書また口頭 |
再審査請求 |
決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内 ⇒文書のみ |
●保険給付に関する決定以外の処分に関する不服申し立て
⇒行政不服審査法に基づき
事業主からの費用徴収
|
①都道府県労働局長に対する異議申立て ②①に対する決定に不服がある場合における厚生労働大臣に対する審査請求 |
不正受給に係る費用徴収 |
①厚生労働大臣に対する審査請求 |
期間 | 保険給付 | 起算日 |
2年間 | 療養(補償)給付 | 療養の費用の支給は、費用を支払った日の翌日 |
休業(補償)給付 | 休業の日ごとにその翌日 | |
葬祭料(葬祭給付) | 労働者が死亡した日の翌日 | |
介護(補償)給付 | 支給事由が生じた月の翌月初日 | |
障害(補償)年金前払一時金 | 傷病が治った日の翌日 | |
遺族(補償)年金前払一時金 | 労働者が死亡した日の翌日 | |
二次健康診断等給付 | 労働者が一次健康診断の結果を了知しえる日の翌日 |
期間 | 保険給付 | 起算日 |
5年間 | 障害(補償)給付 | 傷病が治った日の翌日 |
障害(補償)年金差額一時金 | 障害(補償)年金の受給権者が死亡した日の翌日 | |
遺族(補償)給付 | 労働者が死亡した日の翌日 |
●労災保険に関する書類の保存期間
⇒その完結の日から3年間